自宅やサロンで髪を染める時、白髪がきちんとカバーできているか、ブリーチがきれいに映えるかなど、つい仕上がりばかりに意識が向きがち。しかし、近年発表された複数の調査によると、カラー剤やパーマ剤に含まれる化学成分が乳がんのリスクを高める可能性があるとされており、健康リスクにも注意する必要がありそうだ。

フィラデルフィア州のランケノーメディカルセンターで乳がん治療の専門医を務め、さらにBreastCancer.orgのチーフ・メディカル・オフィサーであるマリサ・ワイス医師は、「これまでカラー剤と乳がんの関係性に関する調査はさまざまあり、その結果や内容も多岐にわたる」という。

カラー剤やパーマ剤などに使われる5000以上の成分は乳がんを起こすリスクは極めて低いとされるものの、製品によって成分の配合率や割合は異なるため、リスクはケースバイケースだという。2011年に米医学研究所が発表した研究によると、「カラー剤が乳がんを引き起こすという確固たる証拠はない」としている。

しかしここ数年で、2つの大規模研究によりカラー剤やパーマ剤と乳がんリスクは密接に関係していることが分かった。では、カラー剤やパーマ剤は使わない方がいいのか。知っておくべきこと、そしてこれからより安全に髪をおしゃれにするためのアドバイスを紹介する。

髪を染めると乳がんのリスクが高まる?

International Journal of Cancerに2019年に掲載された内容によると、アメリカ国立衛生研究所の研究員は、乳がんを患った姉妹が最低1人おり、自身は乳がん経験なしの4万6000人以上の女性を調査(Sister Study)した。

国立環境衛生科学研究所の疫学部門に所属するアレクサンドラ・ホワイトは「カラー剤をここ1年で使用したことがある女性の乳がんリスクは、そうでない女性よりもやや高かった。またそのリスクはパーマ剤やカラー剤を使う黒人女性の方が高かった」と説明する。

より詳細に説明すると……

  • リスクは黒人女性の方が高い。カラー剤が乳がんを引き起こすリスクは、カラーをしていない女性に対して9%高かったが、黒人女性だけに絞るとリスクは45%も高かった。それに対して、白人女性は僅か7%だった。
  • ストレートパーマはもっとリスクが高い可能性がある。過去1年でストレートパーマ剤を使った女性はそうでない女性に比べて乳がんを患うリスクは18%高かった。また使う頻度が高ければ高いほど乳がんリスクも高く、5〜8週間に1回ストレートパーマをする女性のリスクは31%高かった。
  • カラー剤の色も関係する可能性がある。黒人の女性の間では、暗い色と明るい色はリスクが高く、白人女性は明るいカラーのリスクは高いのに対し、暗い色は関係なかった。
  • 若者のリスクが高い。「Sister Study」によると、10〜13歳の時にパーマ剤を頻繁に使っていた女性は閉経前に乳がんを患う可能性が高かった。

これらの数字を見ると、二度とカラー剤を使いたくなくなるかもしれないが、ワイス医師はデータは客観的に見極める必要があると注意する。「女性が乳がんを患うリスクは12%とされている。カラー剤やパーマ剤はそのリスクを9%上げるというならば、それは相対リスクの話で、結果的にリスクが13%になるということです」

もちろん13%でも十分注意が必要な数値だが、もともと女性が抱えるリスクに比べて極端に高くなるわけではない。またそのリスクは人種や使う製品、製品を使い始める年齢などによって変わってくるため、一概に「リスクが高い」と言い切ってしまうことは難しい。

また、「Sister Study」で調査した女性は全員家族に乳がんを患った人がいることから、リスクがもともと高かったということも忘れてはいけない。

North Atlanta Breast Careで乳がんを専門とするライランド・ゴア外科医は「こういった製品が乳がんを直接引き起こすとは絶対的に言えないものの、研究結果はとても説得力があり、製品と乳がんの関係性を証明しています」と話す。

また、なかでも特に黒人女性のリスクを懸念するという。「黒人の間で、髪の毛は大きな意味を持ちます。ある意味宗教のように捉えており、美容室には毎週、もしくは2週間に1回通うほどです」

黒人女性は白人女性よりも40%多く乳がんにより亡くなっており、この研究との関係性も無視できない。

「Sister Study」が発表されてから1年も経たないうちに、Harvard T.H. Chan School of Public HealthとBrigham and Women's Hospitalは11万7000人以上の女性を対象とした調査を発表。

その結果、カラー剤とほとんどのがんには直接的な因果関係はないとしたが、一種の乳がん(エストロゲン受容体陰性、プロゲステロン受容体陰性、ホルモン受容体陰性)だけ、リスクが高まることが分かった。

しかし、この調査の女性はカラー剤を1976年に使い始めており、以来メーカーは処方を改良していることに注意したい。また、同調査の女性の96%は白人だったという。

mixing color

SrdjanPav//Getty Images

製品はどのようにリスクを引き起こす?

髪の色を変えるには、化学成分がキューティクル内部に浸透し、メラニンに反応する必要がある。こういったカラー剤に使われる成分にはアンモニアや過酸化水素など、発がん性があり、ホルモンに反応するようなものが含まれる。

ワイス医師は「人は成分や製品を経皮吸収します。だから一部の避妊薬や薬は肌の上に貼るパッチ状になっているのです。なかでも頭皮は血流量が多く、経皮吸収する度合いが高くなっています」と説明する。

頭皮を経由して成分を吸収するだけでなく、美容室で薬剤の成分を吸い込んでしまう可能性もある。特に自宅の洗面所など、狭く密閉された場所でカラーリングをする場合、注意が必要だ。ワイス医師は毎回吸収する成分の量は僅かだとしても、多くの女性は毎月カラーやパーマを繰り返すため、年々その量が蓄積されていくことに警笛を鳴らす。

なぜ黒人女性のリスクが高いのか?

「Sister Study」の調査では、どちらも化学成分を使う頻度は同様だったにも関わらず、黒人女性が白人女性に比べて乳がんを患うリスクが高かった。

ホワイトは「黒人女性が使うカラー剤やパーマ剤の成分が白人女性と異なる可能性がある。また髪の毛のテクスチャーによって、使う量が変わってくる可能性もあるので、これらの要因が関係してくるかもしれません」と推測する。

黒人女性が使うストレートパーマ剤などの多くは、フタル酸エステルやパラベン、環状シロキサンといったホルモンに作用する成分が含まれる。とある調査によると、黒人女性が使う18製品のうち、11製品は欧州連合で発がん性や女性の生殖異常を引き起こす可能性があるとして禁じられている、またはカリフォルニア州の健康リスクがある成分から保護するプロポジション65で規制されている成分を含んでいたという。

ゴア医師は「黒人女性、有色人種の女性にとってヘアケアはとても大切なこと。問題は、大量生産される製品に配合される化学成分の多くは内分泌プロセスを妨げることです。これらの成分は香り付けをする香料や、製品の寿命を長くする保存料であることがほとんど。この成分の一部は乳がんや妊娠の合併症と関係するとされています。直接的にそういったことを引き起こすとは断言できないものの、明らかなつながりはあります」と説明する。

カラー剤による乳がんのリスクを避けるには?

グレイヘアを楽しむ

もし毎月ヘアカラーにかかるコストや労力で悩んでいるなら、一層グレイヘアを楽しんでみては?特に家族で乳がんを経験した人がいるなど、乳がんのリスクがある人は一つの選択肢として検討しても良いかもしれない。「グレイヘアを楽しむ有名人も多数います」とワイス医師。

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Christian Vierig//Getty Images

ナチュラルヘアを楽しむ

何十年にわたりずっと髪にパーマをかけてきたのであれば、生まれ持ったカールやストレートヘアを生かすのはいかがだろうか。ゴア医師は「これまでずっとトレンドに合わせて髪のテクスチャーを変える社会的なプレッシャーがあったかもしれませんが、今は生まれ持った地毛の癖やテクスチャーを受け入れる風潮があります」と指摘。

もしティーンエイジャーの子どもがいる場合は、カラーやパーマは大人になってからとアドバイスしてみて。「若い時の方が化学成分の影響を受けやすく、乳房組織の成長に影響してしまうリスクがある。大人になって乳がんを患わないためにも、若いうちから体内に取り入れるものを意識すべきです」

若い世代は洗い流せるヘアカラーを取り入れてみたり、パーマ剤の代わりにストレートアイロンやドライヤーを使用することを薦める。

カラー剤やパーマ剤を使いたい場合は?

製品のラベルをしっかり読む

化学者でない限り製品の成分一覧を理解するのは難しいかもしれないが、「プラセンタエキス」など、特に注意すべき成分はいくつかあるとワイス医師は注意する。それを理解するにも、製品の安全性をランキングするEnvironmental Working Groupのヘアカラーのデータベースをチェックするのも一つの手だ。

一時的なヘアカラーを使う

アメリカでは髪を染めるヘアカラー剤が最も人気だが、市場には洗い流せるものや髪をカラーでコーティングする一時的なヘアカラーなど、さまざまなタイプが存在する。

「パーマネントなヘアカラー剤は酸化作用が高い芳香族アミンなどの成分を多く含み、発がん性があるとされています」とホワイト。「セミパーマネントなヘアカラーは髪を色付けするものの化学成分が髪の毛に残り続けることはなく、こういった発がん性のリスクがある成分の配合量は(パーマネントなカラー剤に比べ)低いです」

植物由来のカラー剤を選ぶ

ヘナやカモミール、樹皮、花などから作られ、人工的な成分を含まないカラー剤はリスクが低い選択肢としてワイス医師は薦める。

ヘアカラーの頻度を減らす

地毛に近い色を選ぶことで、髪が伸びた時のプリン状態を避け、カラーの頻度を減らすことができる。また根本用のタッチアップパウダーも使ってみて。髪を染める頻度が減れば、それだけ化学成分が残るリスクを減らすから。

化学成分への露出を減らす

化学成分を吸い込まないためにも、室内の換気が十分で、席の間隔もきちんととっているサロンを選んで。また、セルフで髪を染める場合は、天気が許す限り外で染めるのもいいだろう。

きちんと洗い流す

髪を染める時、ワイス医師は「洗い残しがないように、入念に薬剤を洗い流して。また染めている間と直後は水分を多めに摂るようにしよう」とアドバイスする。

最後に

これまで言及してきた調べはどれも気にするべきだが、世の中にたくさん存在する研究の僅か一部に過ぎないことを忘れないで。

「カラー剤やパーマ剤がもたらす乳がんへのリスクは決して大きいとは言えません。またケミカルなヘア製品は女性ががんを患う要因の一部にしか過ぎないのです」とホワイト。

ゴア医師も同意見で、乳がんになる背景はもっと複雑で、さまざまな要因があると指摘する。「健康に気をつけ、アルコールの摂取量を注意し、果物や野菜を多く摂り、運動も適度に行い、放射線を浴びる頻度を減らすことは、すべて乳がんのリスクを避けるためにできることです」

しかし、それでも自分のリスクを心配する人は地毛のままで過ごしたり、使う製品の種類や量を意識したりすることは有益かもしれない。「遺伝子や吸い込む空気といった一部の要因はコントロールすることができないが、カラーやパーマといったヘアスタイルは変えることができるので、一つの選択肢として考えてもいいでしょう」とワイス医師。

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

Transaltion: Eri Kitasaka From Good Housekeeping US

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Headshot of Marisa Cohen

Marisa Cohen is an editor in the Hearst Lifestyle Group’s Health Newsroom, who has covered health, nutrition, parenting and culture for dozens of magazines and websites over the past two decades.

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